Chuck’s Cafe (from a film “Duel”)

チャックズ・カフェ。小さな木の板にアクリル。

体調をくずして二日間何も出来ないでいたところ、ちょっとマシになったので最近気になっていたスピルバーグの『激突!』を観る(子供の時に観たような気もするが忘れた)。トラックに追いかけられるだけの話なのに、こういう風に撮ったら面白いだろう、こんな構図はどうだ、みたいな興奮がこっちにまで伝わる。主人公が入ったカフェでみんなが怪しい人に見える場面では、1950年代以前のアメリカ人みたいなレトロな顔ばかり。

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Bon Odori

近所の公園の盆踊りを見に行った。スピーカーは「なんとかかんとか東京音頭〜」と歌っていて、子供会の子供たちが叩く太鼓がずっと「ドドンドドン スココンコン ドドンドドン スココンコン」と響いていた。風に揺れる提灯、白くて小さい三日月、誰かが落とした光る眼鏡。

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Dogra Magra (20) (a novel by Kyusaku Yumeno in 1935)

『ドグラ・マグラ』夢野久作(20)

キチガイ地獄外道祭文――一名、狂人の暗黒時代――

墺国理学博士
独国哲学博士 面黒楼万児 作歌
仏国文学博士
         
▼ああア――アア――あああ。右や左の御方様へ。旦那御新造、紳士や淑女、お年寄がた、お若いお方。お立ち会い衆の皆さん諸君。トントその後は御無沙汰ばっかり。なぞと云うたらビックリなさる。なさる筈だよ三千世界が。出来ぬ前から御無沙汰続きじゃ。きょうが初めてこの道傍に。まかり出でたるキチガイ坊主……スカラカ、チャカポコ。チャカポコチャカポコ…………サアサ寄った寄った。寄ってみてくんなれ。聞いてもくんなれ。話の種だよ。お金は要らない。ホンマの無代償だよ。こちらへ寄ったり。押してはいけない。チャカポコチャカポコ……

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Dogra Magra (19) (a novel by Kyusaku Yumeno in 1935)


『ドグラ・マグラ』夢野久作(19)

「……正木先生が……自殺……」
 その声が自分の耳に這入ると私は又、自分の耳を疑った。正木先生のような偉大な、達人ともいうべき人が自殺する……そんな事が果して在り得ようか。
 そればかりでない。この精神病科教室の主任教授となった人が二人とも、ちょうど一年おきに、しかも場所まで同じ海岸の潮水に陥って変死する……そんな恐ろしい暗合が、果して在り得るものであろうか……と驚き迷い、呆れつつ若林博士の蒼白い顔を凝視した。

Dogra Magra (18) (a novel by Kyusaku Yumeno in 1935)


『ドグラ・マグラ』夢野久作(18)

「ハア。ではその行方不明になられた正木先生は、どうしてこの大学に来られるようになったのですか」
「それはかような仔細です」
 と言ううちに若林博士は、出しかけていた時計を又ポケットの中に落し込んだ。弱々しい咳払いを一つして話をつづけた。
「ちょうど斎藤先生の葬儀の式場に、正木先生がどこからともなく飄然と参列しに来られたのです。多分、新聞の広告を見られたものと思われますが……それを松原総長が、葬式の済んだ後で捉まえまして、その場で斎藤先生の後任を押付けてしまったものです。これは非常な異式だったのですが、あれ程に人格の高かった斎藤先生の遺志を、外ならぬ総長が取次だのですから、誰一人として総長のかような遣り方を、異様に思う者はありませんでした。かえって感激の拍手をもって迎えられたくらいです」
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参考として大正時代のお葬式の写真を何枚か見たけど、ネット上ではそんなに資料が見つからないし、地方によっても風習が違うかもしれないし、やっぱりちょっと検索しただけでは細部は良く分からない。ひとつ新たに知ったのは、白い喪服が主流の時代もあったということだ。明治時代に皇室の葬儀をきっかけに黒い喪服が増えてきて、第二次世界大戦時に黒が広く浸透したらしいです。あと、明治・大正初め頃までは遺影を飾る習慣はなくて、著名人とかお金のある人は代わりに葬儀写真集というものを作ることがあったらしいです。生前の元気な時の様子から死の床、お葬式の様子まで、時系列で記録に残してあるという。実際に手にとって見てみたい。

Dogra Magra (14) (a novel by Kyusaku Yumeno in 1935)


『ドグラ・マグラ』夢野久作(14)

……ところで正木先生は、それから丸八年の間、欧洲各地を巡遊して、墺、独、仏、三ヵ国の名誉ある学位を取られたのですが、そのうちに大正四年になって、コッソリと帰朝されますと、今度は宿所を定めずに漂浪生活を初められました。全国各地の精神病院を訪問したり、各地方の精神病者の血統に関する伝記、伝説、記録、系図等を探って、研究材料を集められるかたわら『キチガイ地獄外道祭文』と題する小冊子を、一般民衆に配布して廻られたのです」

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Illusion in the shape of a woman


女の形をした幻。小さな木の板にアクリル。

今読んでいるナイジェリアの小説『やし酒飲み』に「女の形をしたまぼろし」という言葉が出てきて、なんかこういうポーズの人が思い浮かんだ。アフリカ文学を読んだのは初めてだけど、魔術的で原始的な深い森、呪術的で鮮烈な表現、神話みたいなストーリー展開や突拍子もない乱暴な行動……まだ読み途中だけど、とても面白いし結構衝撃受けた。

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Dogra Magra (17) (a novel by Kyusaku Yumeno in 1935)

『ドグラ・マグラ』夢野久作(17)

「……そうです。斎藤先生は変死をされたのです。斎藤先生は昨大正十四年の十月十八日……すなわち変死される前の日の午後五時ごろに、平生のとおり仕事を片づけて、医局の連中に二三の用務を頼んで、この部屋を出られたのですが、それっきり筥崎、網屋町の自宅には帰られませんでした。そうしてそのあくる朝早く、筥崎水族館裏手の海岸に溺死体となって浮き上っておられたのです。発見者は水族館の掃除女でしたが、急報によって警察当局や、わたしどもが駈け付けまして調査いたしました結果、多量に飲酒しておられたことが判明いたしましたので、たぶん、自宅へお帰りになる途中で、だれかきわめて懇意な人に出会って、久方ぶりに脱線された結果、帰り道を間違えて、彼処の石垣の上から落ちられたものであろう……ということになっております」

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Grosse Victime Magazine – Spécial Colis Piégé

フランスのアート系定期刊行物『Grosse Victime Magazine』が、最新号に私の絵を載せてくれました。この絵はデンバーに住んでいた時の体験を元にしています。閑静な住宅街のバス停で待っていたら、パトカーがすっと来て停まって警官が二人降りてきて、ベンチに座っていた男の人にいきなり手錠をかけてまた3人で乗り込んですっと去っていったというものです。数秒の出来事だったけど印象に残っています。

今号のテーマは「ブキニスト」です。ブキニストとは、パリのセーヌ河岸に軒を並べる本の売店のことで、数百年の歴史があるそうです。『Grosse Victime Magazine』はサマリテーヌ百貨店の向かいにスタンドを持っているそうで、そこでアートや古書を販売しています。このファンキーな表紙も良いですネ。アンダーグラウンド・コミックアーティストAline Crumbへのオマージュページも。

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Wandering

さすらい(最近、奥田民生の『さすらい』ばかり聴いていたので)。小さな木の板にアクリル。

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Forest of memory

森が描いてある系を集めてみた。これはどこなんだろう。やっぱり日付変更線上にある島なんだろうか。それとも楼蘭の「さまよえる湖」やラピュタのように移動する土地、あるいは海に沈んだ古代帝国の記憶、またはどこかに存在する死後の一時的な休憩所。

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