『ドグラ・マグラ』夢野久作(24)

ポカン博士が演説をする時は、なんでもどこかの往来のはげしい、電車の交差点か何かで、繁華な人ゴミの中に立ちどまっているつもりらしい。交通巡査みたいに大手を拡げて、前後左右の群集を睨みまわす恰好をすると、イキナリ拳固を空中に舞わしながら、金切声をふり絞りはじめるのだ。
「……止まれッ……。
 ……止まれッ……。
電車も、自動車も、自転車も、オートバイも、バスも、トラックも、人力車も皆止まれッ……。紳士も、淑女も、モガも、モボも、サラリマンも職業婦人も、ブルもプロも、掏摸も、巡査も動いてはいけない。
……諸君はタッタ今、非常な危険と直面しているのだ。
……諸君は現在タッタ今、脳髄で物を考えつつ歩いているだろう。……その脳髄の判断力でもって交通巡査のゴー・ストップを聞き分け、旗振りの青と赤を見分け、飾窓の最新流行を批判し、ポスターに新人の出現を知り、夕刊記事の貼出しに話題を発見し、掏摸を警戒し、債権者を避け、イットの芳香を追跡しつつ……イヤが上にもその脳髄の感触を高潮させつつ、文化人のプライドをステップしている……つもりでいるだろう。
……それが危険だと云うのだ。それが非常だと警告するのだ。……脳髄の非常時……。
……見よ。聞け。驚け。呆れよ……

Rose

湯島の喜屋と銀座の月光荘に行ってスケッチブックを買った。帰りに丸の内の方のローズベーカリー(前は銀座のドーバーストリートマーケットの上のローズベーカリーが好きだったんだけど、店内の面積が半分になってからは雰囲気が変わってしまったので丸の内の方が好き。でもメニューが少ない)でお茶しながらボールペンで描いてみる。隅然、紙の色もローズ。

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『ドグラ・マグラ』夢野久作(23)

絶対探偵小説
脳髄は物を考える処に非ず
=正木博士の学位論文内容=
一記者

(中略)

ところが、そのうちに、ソンナ発作がダンダンと高潮して来るとポカン博士は、やがて部屋のマン中の人造石の床の上に立止まって不思議そうにキョロキョロとそこいらを見廻わしはじめる。そうして自分の蓬々たる頭の毛の中から、何かしら眼に見えないものを掴み出して、床の上に力一パイ叩きつける真似をする。それからその床の上にタタキ付けたものを指して、脳髄に関する演説を滔々と、身振まじりにはじめるのであるが、そのうちに自分の演説に感激して、興奮の絶頂に達して来ると、ツイ今しがた自分の頭の中から掴み出して床の上にタタキ付けた眼に見えない或るものを、片足を揚げて一気にふみ潰す真似をすると同時に、ウーンと眼を眩わして床の上に引っくり返ってしまう。

Small wood paintings so far

小さな木の板にアクリル絵の具で描くシリーズ。これで60個。私が目指す迫力を得るには、最低200個くらい作らないといけないかも。タロットとかルノルマンみたいなカード占い、時代不詳のカルタ、またはカードゲームみたいにも見える。

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Shrubbery

植え込み。小さな木の板にアクリル。

法隆寺の駐車場にある植え込みが実は古墳だった、というニュースをネットで見て。

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Road construction at 1 a.m.

午前1時の道路工事。絵を描きたいので写真を撮っても良いかと聞くと、とても親切に対応してくれた。ただ、もう作業が終わるタイミングだったので、店じまいモードになっている。

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The river carrying messages in bottles

瓶に入った伝言が流れてくる川。小さな木の板にアクリル。

瓶を拾って中の手紙を読んでもいいし、読まなくてもいい。瓶を拾わないで、そのまま流れていくにまかせてもいい。全てのタイミングは完璧なので、拾うか拾わないかで迷わなくていい。

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Debussy

ドビュッシーのピアノ曲を聴くと、なんかこう郷愁的に心を揺さぶられるんだけど、どう表現したらいいのかな。時間のベールを何枚も何枚も潜り抜けていく感じ?氷柱からゆっくりと滴り落ちる冷たい水を眺めている感じ?

結構前に描いたスケッチをちょっと修正。

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