Dogra Magra (42) (a novel by Kyusaku Yumeno in 1935)

『ドグラ・マグラ』夢野久作(42)

―東京から直方へ来たわけは、母が卜筮を立てたんだそうです。「狸穴の先生はよく適中る」って云っていましたから大方、その先生が云ったのでしょう。「お前達親子は東京に居るといつまでも不運だ。きっと何かに呪われているのだから、その厄を落すためには故郷へ帰ったがいい。今年の旅立ちは西の方がいいとこの通り易のオモテに出ている。お前は三碧木星で、菅原道真や市川左団次なぞと同じ星廻りだから、三十四から四十までの間が一番災難の多い大切な時だ。尋ね人は七赤金星で、三碧木星とは相剋だから早く諦めないと大変な事になる。双方の所持品同志でも近くに置くとお互いに傷つけ合おうとする位で、相剋の中でも一番恐ろしい相剋なのだから、忘れても相手の遺品なぞを傍近くに置いてはいけない。そうして四十を越せば平運になって、四十五を越せば人並はずれたいい運が開けて来る」と云ったんだそうです。

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