“Die Ringe des Saturn” W. G. Sebald (The man with a poor memory and only wearing mourning clothes replies with lines from King Lear)

喪服以外のものを着たことがなく、記憶力があまりないスクウィレル氏が、通りのむこうから〈リア王〉のセリフで返事をする。

W・G・ゼーバルトの『土星の環』を読んでイメージした、読書メモ的な絵。

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“Die Ringe des Saturn” W. G. Sebald (Algernon Swinburne with fiery red hair is one of Eton’s wonders)

以前、W・G・ゼーバルトの『土星の環』を読んで読書メモ的に描いた絵をもう少し描きこみ、20世紀初頭のイギリスの印刷物をカラーコピーして、アルファベットを抜きだしたものを貼る。

成長のどの過程においても常人より背が低く、ぎょっとするほど華奢、横にふくれた燃えるような赤髪で、薄緑に光る眼のアルジャーノン・スウィンバーンは、〈イートンの驚異のひとつ〉。

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Young police officers in “The Beatles: Get Back” (part 3)

パート3にはトーストは出てこなかったので、屋上コンサートを止めに来た若い警察官を選んだ。右の人が印象的だったので。頬の赤さがいかにも若そうだと思ったら、まだ19才だった。昨年72才になられたそうで、イギリスのインタビュー記事があった。Ray Daggさんという方で、当時はビートルズよりサイモン&ガーファンクルが好きだったとのこと。ピーター・ジャクソン監督のこのドキュメンタリー映画が公開されてから、世界中から手紙をもらうそうです(どういう内容の手紙だろう)。前からすごく謎なのは、どうしてイギリスの警察官は帽子の紐を顎の下ではなく、唇の下に持ってくるのか?だって外れそうだし、しゃべりずらそう。現にこの人も紐が何回も口の中に入っているし。

その後、現在のかぶり方を検索すると、誰も唇の下にストラップを持ってきていないようだった。また、この帽子(Custodian helmetという)は、主にイングランドとウェールズで使用されており、スコットランドと北アイルランドの警察では使われていないとのこと。

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Toasts in “The Beatles: Get Back” (part 2)

またトーストが出てきた。今回はマーマレードではなくバターか?朝食と昼食の間の軽食みたいな感じなのでしょうか。
なにしろ7時間以上あるドキュメンタリーなので、パート3にたどり着くのに何日もかかる。切っても切ってもビートルズ。すごく濃い。でもいつのまにか、オノ・ヨーコに目が釘付けになってしまうのを止められない。

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Dogra Magra (25) (a novel by Kyusaku Yumeno in 1935)

『ドグラ・マグラ』夢野久作(25)

……ナニイ。眼が眩って来たア……。
アハハハハハ……それあ眩るだろう。吾輩の気焔を聞かされたら、大抵の奴がフラフラフラと……。
……ナ……なんだ。そうじゃない。葉巻に酔ったんだと?……
アッハッハッハッ……コイツは大笑いだ。
ワッハッハッハッハッハッハッ。
(文責在記者)

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Dogra Magra (26) (a novel by Kyusaku Yumeno in 1935)

『ドグラ・マグラ』夢野久作(26)

胎児の夢
(中略)
人間の胎児は、母の胎内に居る十箇月の間に一つの夢を見ている。
その夢は、胎児自身が主役となって演出するところの「万有進化の実況」とも題すべき、数億年、ないし、数百億年に亘るであろう恐るべき長尺の連続映画のようなものである。すなわちその映画は、胎児自身の最古の祖先となっている、元始の単細胞式微生物の生活状態から始まっていて、引き続いてその主人公たる単細胞が、次第次第に人間の姿……すなわち胎児自身の姿にまで進化して来る間の想像も及ばぬ長い長い年月に亘る間に、悩まされて来た驚心、駭目すべき天変地妖、または自然淘汰、生存競争から受けて来た息も吐かれぬ災難、迫害、辛苦、艱難に関する体験を、胎児自身の直接、現在の主観として、さながらに描き現わして来るところの、一つの素晴しい、想像を超越した怪奇映画である。……その中には、既に化石となっている有史以前の怪動植物や、又は、そんな動植物を惨死、絶滅せしめた天変地異の、形容を絶する偉観、壮観が、そのままの実感を以て映写し出される事はいうまでもない

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Dogra Magra (24) (a novel by Kyusaku Yumeno in 1935)

『ドグラ・マグラ』夢野久作(24)

ポカン博士が演説をする時は、なんでもどこかの往来のはげしい、電車の交差点か何かで、繁華な人ゴミの中に立ちどまっているつもりらしい。交通巡査みたいに大手を拡げて、前後左右の群集を睨みまわす恰好をすると、イキナリ拳固を空中に舞わしながら、金切声をふり絞りはじめるのだ。
「……止まれッ……。
 ……止まれッ……。
電車も、自動車も、自転車も、オートバイも、バスも、トラックも、人力車も皆止まれッ……。紳士も、淑女も、モガも、モボも、サラリマンも職業婦人も、ブルもプロも、掏摸も、巡査も動いてはいけない。
……諸君はタッタ今、非常な危険と直面しているのだ。
……諸君は現在タッタ今、脳髄で物を考えつつ歩いているだろう。……その脳髄の判断力でもって交通巡査のゴー・ストップを聞き分け、旗振りの青と赤を見分け、飾窓の最新流行を批判し、ポスターに新人の出現を知り、夕刊記事の貼出しに話題を発見し、掏摸を警戒し、債権者を避け、イットの芳香を追跡しつつ……イヤが上にもその脳髄の感触を高潮させつつ、文化人のプライドをステップしている……つもりでいるだろう。……それが危険だと云うのだ。それが非常だと警告するのだ。……脳髄の非常時……。 ……見よ。聞け。驚け。呆れよ……

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General Nogi’s house and an oden afternoon at a post war barrack

一年に数回公開している乃木坂の乃木将軍の家に行く。乃木将軍といえば、明治天皇に殉じて夫婦で自刃した人という認識しかなかったけれど、たまたま大正時代の写真集を眺めていて自決当日の朝に撮影したという夫妻の写真を見て興味が湧いたので検索すると、タイミングよく旧乃木邸公開とあったので出かけた。当日に整理券を配り、一回の見学につき20分と決められている。

他のよく管理された古い家(武家屋敷や明治期の和洋折衷の家など)もそうだけど、邸内は穏やかで清々しい空気が流れていて心落ち着く。台所の竃や風呂場など、今見るとお洒落だなと思う。応接室にある経年劣化で少し薄汚れた白いカバーをかけた椅子も当時のまま。書斎には将軍が育てた枯れた盆栽まであった。正面玄関にかけられた大きな鏡の前を通る時、この鏡に夫妻も写っていたんだろうなと思う。古い鏡を見ると、今までどういう素性の人たちを写してきたのかと想像してしまう。

自決した部屋にだけ四方に紙垂が飾ってあった(神社のひらひらした白い紙は「紙垂」と呼ぶことを初めて知った)。数年前までは、血痕の付いた畳表も床に広げて展示してあったようだけど、今回は丸めて木箱の中に立てかけてあった。夫妻は1912年9月13日の夜8時に、明治天皇から賜ったボルドー産の葡萄酒をこの部屋で別れの杯として飲んだらしい。その実物のボトルも別館に展示してあった。二人はどういう想いでこの葡萄酒のラベルを見ていたんだろう。特に静子夫人は。乃木将軍本人はまだしも、夫人的にはどういう心境だったのだろう。静子夫人は将軍より10歳若い52歳だったそうで、現代の感覚ではまだ若い。戦死した二人の息子への思いがよぎったに違いない、と想像して少し重い気分になる。夫妻が自決した部屋と静子夫人の部屋を急いで描いた。

写真撮影は禁止。お土産に邸内や馬小屋などを写した絵はがきセットをもらえた。

その後上野公園に行き、たまたま見つけた食堂で遅いお昼を食べる。1951年に建てられたという相当年季の入った小屋は、まるで戦後のバラックのようで、妙に落ち着く、おでんの午後。

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Yose at Asakusa

浅草演芸ホールの夜の部を鑑賞。寄席に行くのは、10年以上前の鈴本演芸場に続き2回目。幕が降りるときに、舞台袖で太鼓が鳴って掛け声が入るのが好きだった。私は、チンドン屋とか囃子とかにどうしようもなく惹かれる。茶碗を重ねたり傘を回したりする曲芸の影が襖にゆらゆらしているのを見て、この影の形は明治時代から変わっていないんだろうな、と眺めていた。

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Dogra Magra (23) (a novel by Kyusaku Yumeno in 1935)

『ドグラ・マグラ』夢野久作(23)

ところが、そのうちに、ソンナ発作がダンダンと高潮して来るとポカン博士は、やがて部屋のマン中の人造石の床の上に立止まって不思議そうにキョロキョロとそこいらを見廻わしはじめる。そうして自分の蓬々たる頭の毛の中から、何かしら眼に見えないものを掴み出して、床の上に力一パイ叩きつける真似をする。それからその床の上にタタキ付けたものを指して、脳髄に関する演説を滔々と、身振まじりにはじめるのであるが、そのうちに自分の演説に感激して、興奮の絶頂に達して来ると、ツイ今しがた自分の頭の中から掴み出して床の上にタタキ付けた眼に見えない或るものを、片足を揚げて一気にふみ潰す真似をすると同時に、ウーンと眼を眩わして床の上に引っくり返ってしまう。

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