General Nogi’s house and an oden afternoon at a post war barrack

一年に数回公開している乃木坂の乃木将軍の家に行く。乃木将軍といえば、明治天皇に殉じて夫婦で自刃した人という認識しかなかったけれど、たまたま大正時代の写真集を眺めていて自決当日の朝に撮影したという夫妻の写真を見て興味が湧いたので検索すると、タイミングよく旧乃木邸公開とあったので出かけた。当日に整理券を配り、一回の見学につき20分と決められている。

他のよく管理された古い家(武家屋敷や明治期の和洋折衷の家など)もそうだけど、邸内は穏やかで清々しい空気が流れていて心落ち着く。台所の竃や風呂場など、今見るとお洒落だなと思う。応接室にある経年劣化で少し薄汚れた白いカバーをかけた椅子も当時のまま。書斎には将軍が育てた枯れた盆栽まであった。正面玄関にかけられた大きな鏡の前を通る時、この鏡に夫妻も写っていたんだろうなと思う。古い鏡を見ると、今までどういう素性の人たちを写してきたのかと想像してしまう。

自決した部屋にだけ四方に紙垂が飾ってあった(神社のひらひらした白い紙は「紙垂」と呼ぶことを初めて知った)。数年前までは、血痕の付いた畳表も床に広げて展示してあったようだけど、今回は丸めて木箱の中に立てかけてあった。夫妻は1912年9月13日の夜8時に、明治天皇から賜ったボルドー産の葡萄酒をこの部屋で別れの杯として飲んだらしい。その実物のボトルも別館に展示してあった。二人はどういう想いでこの葡萄酒のラベルを見ていたんだろう。特に静子夫人は。乃木将軍本人はまだしも、夫人的にはどういう心境だったのだろう。静子夫人は将軍より10歳若い52歳だったそうで、現代の感覚ではまだ若い。戦死した二人の息子への思いがよぎったに違いない、と想像して少し重い気分になる。夫妻が自決した部屋と静子夫人の部屋を急いで描いた。

写真撮影は禁止。お土産に邸内や馬小屋などを写した絵はがきセットをもらえた。

その後上野公園に行き、たまたま見つけた食堂で遅いお昼を食べる。1951年に建てられたという相当年季の入った小屋は、まるで戦後のバラックのようで、妙に落ち着く、おでんの午後。

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