Underground vaults in Edinburgh

10年くらい前にスコットランドのエディンバラを訪れたとき、Mercat Toursが主催する地下の穴倉ツアー(Blair Street Underground Vaults)に参加した。これはどういうツアーかというと、18世紀末に出来たサウス・ブリッジという道路兼橋の地下にあるたくさんの穴蔵を、案内人と一緒に歩いて見学するものです。その穴蔵は、時代により倉庫や工房、ワイン(クラレット)セラーや酒場として使われ、徐々に密造酒造りや墓泥棒が一時的に死体を隠すような犯罪の巣窟となり、19世紀にはスラムの中でも最下層の人々が住み着くようになったという。第二次世界大戦中には防空壕としても使われたが、瓦礫に埋もれたりして長い間忘れ去られ、商売にしようと思った人達が入口を発見して中を整備し始めた1980年代に再び日の目を見る。
私が参加したのは10人位のツアーで、夜の8時頃になんとかいう広場に一度集まってから路地にある小さな入口より階段で地下に降りた。大学生のような若い男性の案内人が、俳優を目指しているのかなというぐらい熱の入った演技とともに説明してくれた(墓泥棒がスコップで墓を掘り続ける演技とか)。穴蔵が続く狭い通路は、最小限のオレンジ色の照明で薄暗く、200年以上の陽気とは言えない歴史の重みがそこら中の石壁に染み付いているようで、ここに一人で取り残されたら…と想像すると怖い。酒場だった時はよく牡蠣を供していたそうで、牡蠣の殻などが見つかるという。現代でもここでパブとかやったら結構ムーディーで人気が出そうな感じもするが、私としては行きたいような行きたくないような。ここの雰囲気があまりにリアルなので。穴倉から出土した遺物をみせてくれる部屋もあり、その中に19世紀のランプ用の魚油があった。当時のままのガラス瓶に入っており案内人がフタを開けて匂いを嗅がせてくれて、ものすごく酸化した匂いがした。魚油ランプは煙や匂いがひどく、さらに換気の悪い穴蔵で使われて健康にも良くなかったという。他に覚えているのは、年代不詳のピストルの形をしたガラスのおもちゃなど。ここに住んでいた19世紀の一家の子どもの持ち物だったのか、20世紀の防空壕時代の子どもなのか。ホテルへの帰り道、夜の石畳を歩きながら、亡霊が地下からついてきていないかしばらく不安だった(歴史好きな人やダークで変わった趣が好きな人にはおすすめのツアーです。オフィシャルガイドブックが充実した内容なので、チケットと一緒に買うとさらに面白い)。

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