“Die Ringe des Saturn” W. G. Sebald (12)

同時代のオランダでは、死者の出た家の鏡のことごとく、風景や人物や果物の描かれた絵画のことごとくに、喪のための黒絹の薄紗を掛けておく習慣がある、それは肉体を離れて最後の旅路をたどる魂が、わが身の姿やいまとこしえに失われゆく故郷の景色を眼にすることによって、惑いを起こすことがないようにとの配慮からである、と。

『土星の環』W・G・ゼーバルト/著、鈴木仁子/訳(白水社)

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