“Die Ringe des Saturn” W. G. Sebald (11)

ギュスターヴ・フロベールの夢には、昼夜を問わず巨大な砂塵の雲がただよっていた、とジャニーンは語る。アフリカ大陸で立ち起こった砂塵の雲は、地中海からイベリア半島を通り過ぎ、ノルマンディーの田舎町に降り下りた。エマ・ボヴァリーの冬のガウンの裾にはさまった一粒の砂に、フロベールはサハラ砂漠全体を見ていた…と、ジャニーンは「私」に話す。

『土星の環』W・G・ゼーバルト/著、鈴木仁子/訳(白水社) *本文の一部を要約しました。

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