『浅草ラビリンス』と浅草地下商店街
ラビリンスをテーマにZINEを作るから数ページ描かないかと言われ、『浅草ラビリンス』というタイトルの一連の鉛筆画をものすごーくスローに進めていたところ、ZINEのテーマがラビリンスじゃなくなってしまい、しかも3、4ページにするはずが16ページになってしまいました。
ギリシャ神話に出てくるラビリンスは、ミノタウロスが閉じ込められた迷宮です。中に入った青年テセウスを、ミノス王の娘アリアドネーが糸を使い脱出の手助けをします。
私の「ラビリンス」では、舞台を浅草地下商店街にしました。1955年に開業されたという時間の積み重なりが個人商店の活気と混じりあい、凝縮されているような場所です。それほど広くない空間ですが、汚れた配管や電気系統のコードが無秩序に張りめぐされていて「迷宮」の雰囲気が漂っており、戦後の煤けた空気がひび割れた床や古ぼけた壁、立ち入り禁止区画の暗闇に、いまだに潜んでいるかのようです。
年末年始にちょっと体調を崩して軽い鬱状態にもなったせいか、床の点々模様や壁の染みなどを描いているととても落ち着きました(こう書いたら、エドワード・ゴーリーの本に出てくる壁の染みを舐めて過ごした人を思い出した)。
昨年の秋に絵の資料として浅草地下街に写真を撮りに行ったのですが、その数日後、隅然ヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS』を観たら、この地下街が出てきて主人公が焼きそばの「福ちゃん」で夕食をとっている場面が出てきて驚きました。私の絵で女の子が働いている店は「福ちゃん」を元にしています。秋とはいえまだまだ暑い最中、少し汗をかきながらいただいた太めの焼きそば、おいしかったよ。

