『ドグラ・マグラ』夢野久作(54)

するとお八代さんもうなずきまして、土蔵の戸前の処へまわって行きましたが、内側からどうかしてあると見えまして、土戸は微塵も動きません。すると、お八代さんは又うなずいて、すぐ横の母屋の腰板に引っかけてある一間半の梯子を自分で持って来て、土蔵の窓の下にソッと立てかけて、私に登って見よと手真似で云いつけましたが、その顔付きが又、尋常で御座いません。その上に、その窓を仰いで見ておりますと、何かチラチラ灯火がさしている模様で御座います。