夜に出発の飛行機で東京からヨーロッパ方面に行った時、時差に向かって飛んでいるのでずーっと夜だった。夜に向かって飛んで、いつまでも夜だった。窓の下はモンゴルや中央アジアの暗闇で、時たま二、三個の丸い灯りが見えることがあった。見える度に、前の座席のスクリーンにリアルタイムで写しだされる飛行ルートを確認して、どこの上空を飛んでいるのか知ろうとした。私は飛行機の席は必ず窓際を取り、外の景色に貼り付いていることが多いので、灯りが見える度に、あそこに人が住んでいるのかな、周りはこんなに暗くて何もなさそうだけど何をしている人達なんだろう、私はあの人たちの灯りをいま見ているけど向こうはこちらの飛行機の灯りを見ているんだろうか、などと想像していた。深い闇の中に浮かぶ小さな灯りに、ささやかな人の営みの気配と親近感を抱いた。