Denver Union Station

この死海文書のような朽ち方をしている紙は、デンバーの鉃道駅ユニオン・ステーションにあったダイナーのスケッチです。わら半紙に20年くらい前に描きました。デンバーに住んでいた時、夜、ユニオン・ステーションに行くのが好きで、たまにアムトラックが停まっていると、シカゴから来たんだろうか、次はカリフォルニアか…などと想像してわくわくしました。普段はひとけがなく、冬は十分に暖房が効いていないので、堅くて背もたれの高い木のベンチに座っていると底冷えがしてきました。片隅には、出発を待つ人たちが利用するダイナーのカウンターがあり、アムトラックの発着がある時以外は閉まっていました。駅もダイナーも1940年代からあまり変わっていなさそうでした。家に帰ってベッドに横になっていると、遠くからアムトラックの汽笛の音が聞こえてきて、その響き方にロッキー山脈のふもとの大平原を進んで行く旅情を感じました。線路と列車が唯一の人工物という孤独なロマンチックさ。ユニオン・ステーションの内装はその後改装されて、あの寂しい空気感は一掃されたようです。あの頃の駅の写真はなく、残っているのはボロボロのスケッチと記憶だけ。

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