The worst motel in Arizona

90年代の終わり頃。ラスベガスに向かって彼氏と二人で車で旅行中、アリゾナの小さな町で、絵に描いたように最低なモーテルに泊まった。一泊13ドルだった。インド人の女性から鍵を受け取り部屋に向かう途中、泊まり客ではなくて住んでいる感じの人たち数人とすれ違った。みんな、もちろん裕福そうではなく、なんとなくあきらめモードというか、つかれた様子の人たちだった。部屋に入ると、薄汚れたカーテンはボロボロで、キッチンのビニール張りの床は剥がれ、小さな冷凍庫の中は霜だらけでちゃんと閉まらなかった。蛍光灯の下、買ってきたテカテビールの6缶パックをキッチンテーブルの上に並べ、二人で生温いビールを飲んだ。真夜中にベッドに入ると、誰かが無言でドアをドンドン叩いた。怖いので開けない。ドンドンドン。銃で鍵を壊されたらどうしようかと怯えて息を潜めていた。翌朝、シャワーに入ると排水溝が詰まっていて、水が足首の位置まですぐに溜まった。そのうえ、フタのない排水溝の奥からゴキブリの死骸が浮いてきて、足元の周りをぷかぷか漂っていた。

チェックアウトして車に乗ろうとすると、ネイティブアメリカンの男性が来て、駅まで乗せてくれと頼んできた。3人で駅に向かう途中、財布の入ったバッグが男性のいる後部座席に置きっぱなしなことに不安になり、私が振り向いてバッグを取って手元に置くと、それを見た男性が言った。「インディアンは盗まない」

>> instagram