『ドグラ・マグラ』夢野久作(76)
私は開いた口が閉さがらなかった。正木、若林の両博士が、何のためにコンナ奇妙なイタズラをするのかと思い迷った。悪戯にしても余りに奇妙な、不合理な事ばかり……一体今朝から見た色んな出来事や、様々の書類の内容は、みんな真剣な事実なのか知らん。それとも二人の博士が馴れ合いで、私を戯弄ために仕組んだ、芝居に過ぎないのじゃないかしらん……と……そんな風に考えまわして来るうちに、今の今まで私の頭の中に一パイになっていた感激や、驚きや、好奇心なぞの山積が、同時にユラユラグラグラと崩れ初めて、自分の身体と一緒にスウーとどこかへ消え失せて行くように感じたのであった。
(引用は青空文庫より)
