奥多摩の御岳山で、よく手入れされた素晴らしい茅葺き屋根の家を見つける。入り口に、おいしそうな焼きおにぎりの写真が貼ってあったので、お腹が空いていたこともありそのまま吸い寄せられるように敷地に入ると、1866年に建てられたという御師の家だった。御師とは、参詣者の宿泊などの世話をしたり祈祷をしたりする神職で、この地域は元々御師の集落だったらしい。その末裔の14代目の方が出てきて、奥に神殿がある広い部屋に通される。ここは東馬場という宿屋、兼茶屋ということだけど、平日の午後ということもあり誰もいなかった。江戸時代のものらしき造り付けの大きい箪笥の前で古い日本家屋の匂いを嗅ぎながら、障子や天井に漂う幕末感にテンションが上がる。この部屋が見てきた時間ー明治時代のある日、大正のある日、昭和のある日、などに想いを馳せながら、このメニューにのっている食事や甘味を全部食べたい…などと食いしん坊なことを考える。出てきた焼きおにぎりは、薄い二等辺三角形のちょっと変わった繊細な形で、ものすごくおいしかった。
